【書評】リクルート創業者・江副浩正氏についての本が面白い
チャルゲです.
以前に「リクルートのCMに感動した」という記事内で,「江副浩正」という本を紹介しました.
その記事内ではさらっとしか紹介しなかったのですが,この本はやはり一記事使って紹介するべき良書だなと思ったので記事にしちゃいました(笑)
ということで,今回は「江副浩正」という本についてお話したいと思います.
江副浩正とは?
まず,江副浩正という人物について紹介します.(以下江副さん)
江副さんはリクルートグループの創業者です.
東京大学卒で「東大が生んだ戦後最大の起業家」と呼ばれています.
戦後最大の収賄事件である「リクルート事件」の当事者でもあります.(僕は生まれていなかったので知らないのですが...)
あの規模の会社を立ち上げる才覚を持ちながら,リクルート事件によって表舞台を去ることとなった江副さん.
彼の激動の人生をノンフィクションに近い形で綴ったのがこの「江副浩正」という本です.ちなみに2021年に別の著者ですが「起業の天才」という本も発売されています。
本の内容
簡単にですが,本の内容について紹介したいと思います.
幼少期
江副さんの幼少期が描かれます.
戦争と優しくない父親というダブルパンチで江副さんは引っ越しを繰り返したり,母が変わったりとひどい幼少期を送ります.
そのような生活であったため,性格も明るくなかったそうです.
家族からの愛を感じることなく幼少期を過ごしますが,才能の片りんを見せ東京大学に合格します.
青年期
東京大学に入学した江副さんの人生は大きく動き始めます.
生涯の親友菅原や大学で会う友人との大学生活や人生初の彼女.
そして運命の「東京大学新聞」との出会い.
屈折した幼少期を過ごした江副さんでしたが,ここで彼は生来の明るさを取り戻します.
そして,東京大学新聞の活動にのめり込み彼の人生は少しづつ様相を変えていきます.
リクルート創業
大学卒業後,企業に就職せずに「東京大学新聞」での求人広告の営業活動を続ける江副さん.
そして,ついに「東京大学新聞」を「大学新聞広告社」と改名して会社を興します.
リクルートの誕生です.
日本全国を飛び回り,ろくに眠る暇もなく働く日々.
ビジネスの荒波にもまれる若き日の江副さんが描かれています.
事業の拡大
求人広告会社として「大学新聞広告社」が成功し,名前を正式に「日本リクルートセンター」,通称リクルートに改名.
そして彼は経営の天才ぶりを発揮します.
優秀な人材を集め方,社員のやる気を刺激する制度,事業の拡大のための打ち手.
天才としか言いようのないほどのビジネスの才覚で,財閥系が牛耳る日本経済界を裸一貫からのし上がっていきます.
また,リクルートスカラシップなど慈善事業にも力を入れ,利益の追求と社会貢献の二つを追い求める姿勢はとても昭和期の企業の考え方からかけ離れていました.
圧倒的先見の明を持つ経営者として大成功を収めます.
見え隠れする危うさ
順調に事業を拡大していく江副さんですが,だんだんおごりのようなものが見え隠れするようになっていきます.
昔なら決してすることのなかった行動や態度によって,そのおごりが表に出始めていました.
素手でのし上がり,関係者への気配りを欠かさなかった江副さんが変わっていくのを昔からのつきあいがあった人たちは敏感に感じていたのです.
江副さんの以前にはなかった心の緩みが描かれます.
リクルート事件
そしてついに戦後最大の収賄事件である「リクルート事件」が発生します.
当事者として厳しい追及に追いつめられる江副さん.
警察の理不尽な追及に耐える様子が描かれます.
読んでいて気の毒にある描写がたくさんありました.
事件後
リクルート事件により何よりも愛している「リクルート」から離れざるを得なくなった江副さん.
しかし,再起をかけ新しいビジネスに取りかかります.
栄華を極めた彼のリクルートから離れたあとの人生が描かれます.
面白いポイント
この本の面白いポイントは2つあります.
一つ目が江副さんの人生についての描写が非常にきめ細かいことで江副さんと一緒に彼自身の人生を回想しているような読書感を味わうことができる点です.
戦後屈指の波乱万丈な人生を追体験することで,アトラクションのようなワクワクを感じることができます.
著者らの江副さんへの愛は非常に深く,この本を書くために本当に丁寧な取材を重ねたであろうことが容易に想像できます.
二つ目が筆者二人がリクルート関係者というだけあり,リクルートのこれまでの成長の歩みを事業戦略レベルで後追いできる点です.
以前の記事でも紹介したように,リクルートは様々な事業を持つ企業であるとともに昭和期に急成長を遂げた会社です.
その成長を可能にした要因の一端を,この本を読むことで感じ取ることができます.
まとめ
波乱万丈の人生を歩んだ江副さん.
2018年現在,日本では起業家と言えば孫正義さん(ソフトバンクグループ)や柳井正さん(ファーストリテイリング)などが思い浮かぶと思います.
しかし,彼ら以前にも起業家はたくさんおり,その中の代表格が江副浩正氏でした.
この本を読むと,彼の功績の偉大さを知るとともにその天才ぶりに驚嘆するしかありません.
本の中で孫正義さんや大前研一さんが江副さんを讃えていることからその突出ぶりが伺えます.
多くのビジネス本と違い人物伝という形をとっているため,ビジネス本に興味がない方でも楽しめる本だと思います.
何より今年のベストセラーで面白さは保証されています(笑)
リクルートについて書かれた本は他にもたくさんありますので、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか?