【就活】航空宇宙工学科の就職先はどこになるのか?~飛行機や人工衛星に関わるには~
みなさんは高校・大学を卒業した後にどんな企業に就職する,またはしたのでしょうか?
学んできた内容でそれぞれ違うと思いますが,自分と異なる分野を学んできた人がどんな企業に行くかは知らない人が多いと思います.
そこで,今回は僕の所属する航空宇宙工学科の就職先についてお話したいと思います.
就職活動
僕が所属する航空宇宙工学科の上位組織は工学部です.
そのため,僕たちの就職活動の大まかな流れは工学部と同じです.
推薦を使う場合は,学生が同じ企業を志望しない限りは推薦を使って自分の行きたい企業に行くことができる可能性が高いです.
もちろん落ちる場合もあるので一概には言えませんが(笑)
全体の2割くらいですが自由応募で就活する学生もいます.
技術職を志望する人が多く,学校へ推薦が来ていない企業を受験する人が多いです.
最近は自分で応募してきた希望者しか受け付けない企業も増えてきているので,これは注意が必要です.
航空宇宙工学科の場合は機電系以外は推薦がないので,化学系・IT系に行きたい場合は自由応募で就活することになることが多いです.
就職先
それではお待ちかねの就職先について見ていきたいと思います.
主にジャンルとしては航空系・宇宙系・自動車関連企業・その他に分かれているので,一つずつ見ていきたいと思います.
航空業界
全体の3割がこの航空業界の企業に進みます.
この中でも系統は二つあって,エアライン系とメーカー系に分かれます.
エアライン系はいわゆるANA・JALで,最近だとLCCであるPeach Aviationも人気です.
採用される場合は,主に総合技術職としてキャリアを始めることとなり、航空機の整備部門に配属になり,整備士として経験を積んでいく人が多いです.
入社後十年を過ぎてくると,エアラインに実際に飛行機を納入するBoeingやAirbusの技術者とともに,どのような仕様や性能の飛行機を作ってもらいたいか,また作っていきたいかという設計に関する仕事にも携わっていきます.
一方,メーカー系だと三菱重工・川崎重工・IHIなどの企業が多いです.
この3つの企業でしか日本で飛行機の機体そのものの仕事に携われないため,この3つは毎年大人気です.
これらのメーカーでは,主に飛行機の翼部分や胴体部分の生産などのBoeingとAirbusの下請け業務をすることになります.
他にも生産だけでなく,強度実験や空力性能実験など行うことは多数あります.
これ以外の会社でも,スバル(旧富士重工)や住友精密工業にも航空関係の仕事があります.(最近トヨタのグループ会社化しましたね)
これらの企業も飛行機の主脚などの部品を作っていますが,飛行機の翼や尾翼の部品というようにさらに生産するものが小さくなるため,好みが分かれるところになってきます.
最近の新しい傾向としては,エアバス・ヘリコプターズも行く人が多くなってきています.
そこでは,ドクターヘリや農業用ヘリの生産をしているので,ヘリコプターの方が好きな場合はこちらに行く人が増えてきているようです.
航空業界の就職に特化した本もあるので、本気で興味がある人は読んでみたほうが良いと思います。
宇宙業界
全体の2割くらいが宇宙系に進みます.
人工衛星関連が多く,三菱電機やクボタが多いです.
ここでも最初は衛星関連のプロジェクトにエンジニアの一人として派遣され,下積みを行います.
基本的な技術が身に付いてくると,プロジェクト全体を見れるようになってくる10年目くらいからプロジェクトマネージャーなど上位の役職に就いていく人が多くなります.
また,最近は宇宙ベンチャーも盛り上がりを見せていて,関連企業が大学を訪問する回数が増えてきています.
そのため,まだ実際に宇宙ベンチャーに就職した人はいませんが,今後就職する人が増えていくのではないかと思われます.
他にも農業は,人工衛星との技術融合が近年速いスピードで進んでおり,クボタやヤンマーなどの農業用トラクターを生産する企業では,宇宙系のエンジニアが多く採用されています.
珍しい例としては,スカパーなどのTV会社のエンジニアとして就職していく人もいます.
この分野に進む学生は約2割と言いましたが,年によって変動が多く,ほとんどだれも行かないという年もあります.
この少なさは衛星技術が日本ではあまり力を入れてもらえていないこととも無関係ではないような気がします.
自動車関連業界
実は多いのが自動車関連企業で,全体の3割から4割くらいの学生が就職します.
航空宇宙工学科と言いながら自動車関連企業に就職する人が一番多いんですよね(笑)
就職先としてはトヨタや本田技研工業,デンソーなどが多いです.
現実的な話になりますが,自動車関連企業の方が航空宇宙関係の企業よりも給料や働く環境が良いです.
日本の産業構造を確認してもらえば分かると思いますが,自動車産業と航空宇宙産業では扱われる金額の桁が違います.
産業別に市場規模を示す面白いツールもあるので見てみてくださいね。
そうなると,当然企業の売上高にも直結してきます.
何人かOBから話を聞いたのですが,「航空宇宙関係の就職先は楽しさはあるけど金銭的メリットはない(笑)」という話はみなさんが口をそろえておっしゃていました.
このあたりは厳しく捉える人が多く,自動車会社に就職する人が増えている原因なのだろうと思います.
その他
上に挙げた企業以外に行く学生が2割くらいで,IT系の企業や電機系・化学系の企業に進みます.
具体的には,日本IBMや日立製作所,三菱化学などです.
それ以外にも,材料力学の知識を生かして東レなどの繊維系の企業に行く人もいますし,多種多様です.
IT系の求人はあまり来ませんが,電気系や化学系の求人はよく来るため需要の高さを感じます.
あと僕みたいに文系就職して,デロイトトーマツやBCGといったコンサルに行くなど,全く違う分野に行く人もいます.
このように文系就職する人は一学年に一人いるか程度で,非常に珍しがられます.
どちらかという学部卒の人は文系就職をする割合が高く,院卒だとほとんどいません.
最後になりましたが,大学教授になる人もさらに少数ですがいます.
教授として採用されるためには博士課程を卒業することがほぼ必須条件です.
しかし,現在日本では博士課程の就職は年齢をネックにされたり、専門性が合わないとされたりで非常に難しいため、おすすめの選択肢とは言えません.
そのデメリットがあるため,博士まで行く人は五年に一人くらいしかいないのですが,その長い勉強期間を経た優秀な学生が助教授として大学に就職する場合もあります.
まとめ
航空宇宙工学科の就職先について紹介しました.
入学前はほとんどの学生が航空宇宙系の就職先に行くのだと思っていたので,学生生活を送っていくうちにこの事実を知ったときは驚きました.
ただし,間違いなく他のどの学科に行くよりも航空宇宙に関連する仕事に就けるチャンスは多いため,本気で目指す人には素晴らしい環境だと思います.
実際に入ってみないと分かりませんが,就職先については公開している大学がほとんどなので,一度見てみることをおすすめします.